LM Studio BionicでExcel経費監査はできる?ローカル9Bを3回実機検証
会社の経費確認では、申請Excelだけを見ても終わりません。法人カード明細や領収書と照合し、経費規程に違反していないかを確認し、最後に監査済みの表を残す必要があります。
この一連の作業を、LM Studio BionicとローカルLLMへ任せられるのでしょうか。
今回は、経費申請Excel、法人カード明細CSV、領収書台帳CSV、経費規程Markdownの4ファイルを用意しました。RTX 4070 Ti 12GBのPCでQwen3.5 9B Q4_K_Mを動かし、頼み方を変えながら3回検証しています。
先に結果をまとめます。
| 試行 | 頼み方 | どこまで進んだか | 完成成果物 | 得点 |
|---|---|---|---|---|
| Run1 | 読み取り専用フォルダから一括処理 | 入力場所とPython処理で反復 | 0件 | 2/20 |
| Run2 | 4ファイルを個別添付して一括処理 | 読み込みと監査判定まで進行 | 0件 | 2/20 |
| Run3 | 個別添付し、グラフを外して分割 | 列名と照合コードの修正で反復 | 0件 | 2/20 |
個別添付なら、4ファイルの読み込みと問題候補の分析まで進みました。しかし3回とも、監査Excelや作業サマリーをProject Filesへ保存できませんでした。
今回の条件では、Bionicと9Bモデルは経費監査の補助には使えても、完成納品をそのまま一任できる段階ではない、という結論です。

画面上で考えている様子ではなく、実際に残ったファイルを基準に採点しました。
Bionic以外も含めて、ローカルAIの導入手順、PCスペック、実機検証をまとめて探す場合は、AIを動かす環境の案内ページも確認してください。
動画で3回の動きを見る
動画で実測の流れと結論を確認したい方はこちら
動画では、入力4ファイル、Bionicの実行画面、3回の止まり方を順番に確認できます。この記事では、正解表と採点基準、個別添付で処理が進んだ理由、実際の仕事へ取り入れる範囲を詳しく整理します。
LM Studio Bionicとは
LM Studio Bionicは、オープンモデルを使い、資料の読み込み、調査、文書や表計算の作成などを進めるAIエージェントです。モデルを選んで会話する通常のLM Studioとは別のアプリです。
今回使ったWork Projectは、文書、PDF、表計算、画像、テキストなどを扱う作業用プロジェクトです。入力資料を読み、作成した成果物をProject Filesへ残せます。
Localモデルを選ぶことと、Web検索や別端末への接続を使わないことは別です。業務ファイルを渡す前に、BionicのLocal・LM Link・Web検索・Cloudの通り道も確認してください。
前回の検証では、7つの資料から古いFAQと告知文を更新できるかを試しました。今回は、複数の表を行単位で照合し、規程に沿って金額を集計する、より表計算寄りの仕事へ進めています。
検証環境
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| OS | Windows 11 |
| GPU | NVIDIA GeForce RTX 4070 Ti 12GB |
| CPU | Intel Core i7-13700F |
| メモリ | 64GB |
| Bionic | 1.0.2 build 3 |
| モデル | Qwen3.5 9B Q4_K_M |
| 実行方式 | Bionic上のローカルモデル |
GPUは3回とも高い割合で動き、最大VRAM使用量は11,414〜11,722MiBでした。モデルが止まっていたのではなく、ファイル処理とコード修正を続けたうえで、成果物の完成に届かなかった結果です。
検証用に用意した4ファイル
| ファイル | 内容 |
|---|---|
| 01_経費申請_202607.xlsx | 社員から出された経費申請 |
| 02_法人カード明細_202607.csv | 利用、取消、申請なしを含むカード明細 |
| 03_領収書台帳_202607.csv | 領収書IDと有効・不足の情報 |
| 04_経費規程.md | 会食費、書籍代、領収書などの判定ルール |
正解表はBionicへ渡していません。実行が終わったあと、人が結果を採点するときだけ使用しました。
検証データについて
この検証に登場する会社名、社員名、申請内容、カード利用、領収書は、すべて本検証のために作成した架空データです。実在する会社、人物、取引、社内情報とは関係ありません。
元ファイルが意図せず変わっていないかも確認しました。3回の実行後に4ファイルのSHA256を再計算し、事前値と一致しています。
正解は合計34,900円、問題は7件
事前に固定した正解値は次のとおりです。
| 項目 | 正解 |
|---|---|
| 承認された現金精算額 | 28,000円 |
| 法人カードの正味計上額 | 6,900円 |
| 会社支出額 | 34,900円 |
| 検出すべき問題 | 7件 |
7件には、会食費と書籍代の上限超過、重複申請、必要な領収書の不足、私物購入、取り消されたカード利用、申請のないカード明細を入れました。
一方、3,000円未満で領収書がない申請も3件用意しています。規程上は問題がないため、機械的に「領収書なし」と誤判定しないことも必要です。
20点満点で「保存された成果物」を採点
| 採点項目 | 配点 |
|---|---|
| 入力4ファイルを変更しない | 2 |
| 法人カード明細4件を正しく照合 | 4 |
| 規程と例外を正しく判定 | 6 |
| 3種類の合計金額を正しく算出 | 5 |
| Excel、Markdown、グラフを保存 | 3 |
| 合計 | 20 |
合格は17点以上、13〜16点は要確認、12点以下は不十分としました。
Bionicの途中説明だけでは、照合結果や合計金額を正解表と比較できません。そのため、画面上で「ほぼ正しい」と説明されても、Project Filesへ保存された成果物がなければ加点していません。
Run1|フォルダを見せるだけでは入力へたどり着けなかった
最初は、4ファイルが入った読み取り専用フォルダをWork Projectへ追加しました。そのうえで、監査、Excel作成、グラフ作成、報告書作成をまとめて依頼しています。
Bionicの右側には4ファイルが見えていましたが、モデル側では入力場所を確定できませんでした。存在しないパスの探索、添付ファイルの再読み込み、Python処理を繰り返します。
10分14秒、41回のツール実行後も入力4ファイルを確実に読めた証拠はなく、Project Filesは空でした。入力ファイルを変更しなかった2点だけを加え、2/20点です。
Run2|個別添付で監査判定まで進んだ
2回目は、同じ4ファイルをメッセージへ個別に添付しました。ファイル名を指示の中にも書き、添付から直接読み込むように頼んでいます。
今回は4ファイルの読み込みに成功しました。監査判定と集計処理まで進み、Run1より明確に前進しています。
ただし、キー名、変数名、Excelグラフの作成処理でエラーが続きました。10分36秒で中断した時点でもProject Filesは空です。確認できる集計表や報告書がないため、採点は2/20点でした。
ここから分かるのは、Bionicへフォルダを見せることと、モデルがそのファイルを処理へ渡せることは同じではない、という点です。今回の環境では、必要な4ファイルをメッセージへ個別添付した方が処理は進みました。
Run3|仕事を小さくしてもコード修正で止まった
3回目は、グラフ作成を外しました。4ファイルの個別添付はそのままにし、監査Excel3シートとMarkdownの作成だけへ絞っています。
入力の読み込みには成功しましたが、Excelのヘッダー行、申請ID、社員ID、領収書ID、重複判定、カード照合のコード修正を繰り返しました。
約12分13秒後も、list.index(x): x not in listの修正中でした。Project Filesは空のままで、結果は2/20点です。
依頼を分ければ必ず成功するわけではありません。今回の9Bモデルでは、表の列構造を正しくコードへ落とし込み、エラーを直して成果物へ保存する部分が最後まで安定しませんでした。
3回の比較で分かったこと
1. 個別添付は処理の入口を改善した
Run1では入力場所の探索で止まりました。Run2とRun3では4ファイルを個別添付したことで、読み込みと監査処理まで進んでいます。
複数資料を扱わせるときは、作業対象を明示し、必要なファイルをメッセージへ直接添付する方法が試しやすい結果でした。
2. 読み込み成功と仕事の完了は別
Run2とRun3では、Bionicが資料を読み、問題候補を考えるところまで進みました。それでも、正解表と比較できるExcelやMarkdownがなければ、経費監査の仕事は完了していません。
AIの最後の説明だけでなく、Project Filesに成果物があるか、開けるか、金額と判定が正しいかを確認する必要があります。
3. 9Bモデルには「候補の洗い出し」から任せる
今回の条件で現実的だったのは、問題候補を探す、規程との照合方針を考える、集計前の下書きを作る範囲です。
最初から監査Excel、報告書、グラフをすべて完成させるより、次のように仕事を分ける方が結果を確認しやすくなります。
- 4ファイルを読み、問題候補だけを文章で出す
- 人が候補と照合キーを確認する
- 確認済みの条件で集計表を作らせる
- 保存されたExcelを開き、合計と判定を正解例で確認する
- 最後にグラフや報告書を別の依頼で作る

まずは「全部やって」ではなく、「問題候補を7件探す」のように、確認できる小さなゴールから始めるのが現実的です。
Bionicは経費Excelに使えないのか
今回の結果だけで、BionicがExcelを扱えないとは言えません。個別添付したRun2とRun3では、入力の読み込みと内部分析まで進みました。
一方で、今回のPC、Bionic 1.0.2 build 3、Qwen3.5 9B、4ファイルの経費監査という条件では、3通りとも完成成果物を保存できませんでした。
使いどころは「完成品を無人で納品させる」より、「人が確認する前提で問題候補を出す」側です。金額の確定と承認は人が行い、実際に保存されたファイルを開いて検算する流れが合っています。
よくある質問
BionicへExcelファイルを渡すことはできますか?
今回の検証ではExcelとCSVを読み込ませることができました。特に、必要なファイルをメッセージへ個別添付したRun2とRun3で読み込みに成功しています。ただし、読み込めることと完成したExcelを正しく保存できることは別です。
フォルダ追加と個別添付はどちらがよいですか?
今回の条件では個別添付の方が処理は進みました。作業対象が少ない場合は、必要なファイルだけを直接添付し、ファイル名と役割を指示へ書く方法から試すと状況を確認しやすくなります。
もっと大きなモデルなら成功しますか?
モデルが大きくなれば列の解釈やコード修正が改善する可能性はありますが、この検証から成功を保証することはできません。同じ入力、正解表、制限時間で再検証して比較する必要があります。
実際の会社データをそのまま試してもよいですか?
この検証では架空データだけを使用しました。実際の業務データを扱う場合は、会社のAI利用規程、個人情報、アクセス権、保存先を先に確認してください。
まとめ|読めるかではなく、完成ファイルまで確認する
- BionicとローカルQwen3.5 9Bへ経費関係の4ファイルを渡した
- フォルダだけのRun1は入力場所の探索で反復した
- 個別添付したRun2とRun3は、読み込みと監査処理まで進んだ
- 頼み方を3通りに変えても、完成成果物は0件だった
- 保存成果物だけの採点は3回とも2/20点
- 現実的な用途は、問題候補の洗い出しと集計前の下書き
- 金額確定、承認、完成ファイルの検算は人が行う
Bionicを試すときは、AIが長く作業したかではなく、目的のファイルが保存され、その中身が正しいかまで確認してください。最初は正解が分かる小さな架空データで試すと、自分のPCとモデルに任せられる範囲を判断しやすくなります。
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本記事の仕様と実測結果は2026年7月26日時点です。
